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大阪・長崎が国へIR認定申請 土壌汚染や資金調達など未だ課題も

観光庁は大阪府・市と長崎県から申請されたIR区域整備計画について、4月27日付で受理したことを発表しました。

今後、国の審査委員会が経済効果や運営能力などを審査したうえで、IR整備地の認定を行います。

IR整備地は最大3ヵ所が認定される予定でしたが、ほかの自治体からの申請はなかったため、大阪府・市と長崎県の2ヵ所で審査されることとなりました。

世界最高水準を目指す大阪IR 土壌問題をめぐり住民監査請求も

国内のIR候補地の中でもいち早く区域整備計画を可決した大阪府・市は、大阪市此花区の人口島「夢洲」にIRを誘致するとし、「世界最高水準の成長型IR」として2029年後半の開業を目指しています。

大阪IRは、あらゆるものを結ぶ結節点としてのIRと、豊かな水辺空間の魅力を体現できる「結びの水都」がコンセプト。

富裕層・ファミリー層・ビジネス利用など、あらゆるニーズに対応した総客室数2,500室となる3棟のホテルのほか、6,000人以上を収容できる国際会議場と20,000㎡の展示場といったMICE施設、約3,500席の劇場「夢洲シアター」などが建設される予定です。

また、カジノ施設の入場料と事業者から納められる納付金による府市の年間収入は約1,060億円を見込んでおり、それらの収益は子育てや教育、健康・医療などの住民福祉の増進への活用が計画されています。

懸念されているギャンブル依存症対策や治安維持については、IR事業者側と府市でそれぞれ独自の対策を持ち、連携を図りながら総合的に取り組むとしています。

不安視されている夢洲の土壌問題については、2021年12月に大阪市が土地所有者として改良費用約790億円を負担するとしていましたが、5月11日に5人の市民らが「土壌対策費の公費負担は違法」として事業者との定期借地契約の締結差し止めなどを求めて、市に住民監査請求を行いました。

市民らは「請求が不本意な結果になれば、住民訴訟を検討する」と発表しており、夢洲の整備費用については大阪IRの大きな課題となっています。

大阪IR 土壌対策費用をめぐる経緯についてはこちら

長崎IR 懸念事項は九州全域で対策も、出資企業はいまだ未公表

佐世保市に位置するハウステンボスへのIR誘致を目指す長崎県は、大阪より2年ほど早い2027年秋頃の開業を計画しています。

コンセプトは「Accept,Device,Creation 様々な文化を受け入れ、融合し、新しい価値を生み出す街」。

和と洋、伝統と革新などの融合を図るとし、ラグジュアリーホテル、現代ヨーロッパ風カジュアルホテル、老舗ヨーロッパホテルといった3棟のホテルのほか、独自ブランドの宿泊施設として伝統的な温泉旅館も建設される予定です。

カジノ施設はIR施設面積の合計に対して2.82%となり、格式高いゆとりのある意匠や顧客層に応じたプランや特典を提供するとしています。
また、カジノ事業による収益は、納付金と入場料を合わせ年間391億円が見込まれています。

依存症や治安維持などの懸念事項については、行政・事業者・関係団体からなる「九州・長崎IR安全安心ネットワーク協議会」を立ち上げ、県の依存症対策ネットワーク協議会や九州・山口各県の医療機関と連携を図るなど、九州地域全域を上げて対策を行う方針です。

長崎IRでは、初期投資額の出資企業が明らかにされていないことが問題視されていましたが、企業名の公表については現在も調整中とされています。

観光庁は審査に十分な時間を要することから認定時期は未定としていますが、年内には正式にIR整備地が認定され、2024年度頃から土地の引き渡しや工事着工などが行われる見通しです。

長崎IR 区域整備計画案の採決について詳しくはこちら

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