北海道、IR誘致断念か 議会・環境問題等クリアの見通し立たず

年内には誘致の判断を行う予定としていた北海道・鈴木直道知事が、IR誘致を断念する方向で調整していることが明らかになりました。

道民会議にてIR誘致に関する議論が21日から25日・26日の3日間にわたって行なわれましたが意見がまとまらず、28日に開催を予定していたIR検討調査会役員会も中止に。
誘致を進めるのが困難な状況となっていることから、今回の誘致について断念する可能性が高まっています。

知事は早ければ11月29日の議会で最終的な意思を正式表明するとみられています。

なぜ断念?北海道が背景に抱えている様々な問題

北海道はIR誘致におおむね前向きな姿勢を引き継ぐ方針で、前任の高橋知事から鈴木知事にバトンタッチしたものの、誘致の是非に関する判断は先延ばしになっていました。
その背景には様々な問題があったことが明らかになっています。

1.道民会議が意思の統一をできていない

今回の定例道議会ではIRに関する議論が重ねられているものの、北海道議会内で過半数を占める自民党会派の道民会議は、会派内での意向を統一決定することができていません。
鈴木知事は「IR誘致のリスクを考えた時、議会の協力なしには前に進めない」「道議会の動向を注視する」と、同会派の意向が判断の前提になると伝えていました。
しかし道民会議は意思決定を知事に委ねるというスタンスであったことから、知事の判断が困難となっています。
道議会を先とする知事の意向に関しては、「行政と議会の本来の関係ではない」と会派内で疑問視する声も多く挙がっている様子です。

2.誘致を決定しても必要な議案が可決される見通しが立っていない

26日のIR検討調査会では「今の北海道にIRは必要なのか」「環境問題が長引きそう」などの懸念の声が相次いで挙がり、途中退席する議員も複数見られるような状態でした。
このように道民会議で意思統一ができておらず、道議会全体でも賛否が分かれている状況では、誘致を進めたとしても必要な議案が可決する見通しが立たないと考えられています。

3.候補地にてレッドリストの動植物が発見されている

北海道のIR候補地である苫小牧市植苗地区で、2018年から行われていた敷地調査の結果が11月に提出され、レッドリストに指定されている動植物が敷地内で発見されたことが明らかになりました。
調査によると、国の天然記念物に指定されている鳥類・クマゲラやオオタカの巣、植物ではラン科のサルメンエビネなどが確認されています。
道の条例では、レッドリストに指定されている動植物が発見された場合、原則開発に配慮しなければならないと定められていますが、道議会でこれらの環境問題に対する具体的な打開策をまとめる見通しが立たなかったことも、誘致の断念に大きな影響があると考えられます。

4.反対派の動きが依然として活発であること

経済8団体によるIR要請がある一方で、年内とされていた判断に向け反対派のアピールも活発化していました。
7月には一般社団法人・北海道自然保護協会が、環境保護に対する懸念から反対の要望書を、10月末には住民団体である「カジノ誘致に反対する苫小牧市民の会」が市に署名を提出しています。

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鈴木知事は、こういった問題を踏まえ総合的に判断した結果、IR誘致を推し進める判断ができなくなったと考えられます。
現時点で誘致に向けた十分な態勢が整っていないことが主な理由となりましたが、会派内では今回は見送りとなっても将来の誘致に向けて継続して検討することを求める声も上がっています。

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